郵便配達は二度チケットをもぎる

演劇未経験者が、駄文をこねます。

「逢いにいくの、雨だけど」感想:iaku

悲しみにも、救いにも逃げない ★★★★★★★★★☆ 9点 あらすじ 小学生のとき。幼なじみに負わせたケガのせいで、うちの家もあっちの家も、ままならなくなってしまった。あの事故で何もかもが歪んでしまった。あんなにひどいことになるなんて。あれから長い月日が経…

「ゲゲゲの先生へ」感想:前川知大

詰め込まれた水木しげるへの愛 ★★★★★★☆☆☆☆ 6点 あらすじ 平成六十年。子供が生まれなくなって人口の激減した日本。人は都市に身を寄せ合い、田舎は打ち捨てられ植物に飲み込まれている。都市は権力による抑圧的な社会で、貴重な妊婦と赤子は政府の管理化に置…

「野がも」感想:アマヤドリ

ヘドウィグの死は必然である ★★★★★★★★☆☆ 8点 あらすじ やり手の豪商ヴェルレ。その息子であるグレーゲルスは17年ぶりに山にある工場から自宅に戻ります。その昔、ヴェルレと過去に共同で事業をしていたエクダル老人は、そのとき行われた不正の罪を一手にかぶ…

「サマータイムマシン・ワンスモア」感想:ヨーロッパ企画

史上最高の「2」かもしれない ★★★★★★★★★★ 10点 あらすじ タイムマシンが現れた「あの夏の日」から、15年後。SF研究会の元メンバーたちと、隣のカメラクラブの部員たちは、再びこの部室にやってきた……。 三十路を過ぎたSF研のメンバーが2018年にカムバック…

「サマータイムマシン・ブルース」感想:ヨーロッパ企画

傑作におじさんの悲しみを加えて。 ★★★★★★★★★☆ 9点 あらすじ 夏、とある大学の、SF研究会の部室。SF研究を一切しない部員たちと、その奥の暗室に居をかまえる、カメラクラブのメンバーたち。そんな日常に、ふと見ると、部屋の片隅に見慣れぬ物体。「これ…

「ロリコンのすべて」感想:ナイスストーカー

ロリコンとは切ない生き物である。 ★★★★★★★★☆☆ 8点 あらすじ 担任教師の坂倉に想いを寄せる11歳の少女・白勢。坂倉はその想いを拒絶し続ける一方で、彼女の裸の写真を隠し持っていた。誰にも明かさずにいた、ロリコン教師の罪の告白。遠い未来、砂の中から発…

『「 」』感想:エンニュイ

言葉が脱色される瞬間 ★★★★★☆☆☆☆☆ 5点 あらすじ 突然流行りだした言葉を失う奇病。最終的には存在が消えてしまうという…。 こんなイントロダクションから始まる舞台ですが、この病にフォーカスするかと言えば、そんなことはありません。むしろ、こんな病気が…

「蛸入道 忘却ノ儀」感想:庭劇団ペニノ

演劇的トリップのお祭り ★★★★★★★★★☆ 9点 あらすじ…と言うか概要 まず、控室のようなスペースに通され、そこで御札に名前と願いを筆でしたためます。 その後、スタジオに案内されるのですが、舞台はお堂。舞台上にお堂が再現されているわけではなく、部屋全体…

「粛々と運針」感想:iaku

「生きている」ことと、「生きる」ことの違い ★★★★★★★★★★ 10点 あらすじ 築野家。弟と二人で母を見舞う。病室で母から紹介されたのは、「金沢さん」という俺たちの知らない初老の紳士。親父が死んだあと、親しい仲らしい。膵臓ガンを告知された母は、金沢さ…

「首のないカマキリ」感想:劇団俳優座

生命の繋ぎかた ★★★★☆☆☆☆☆☆ 4点 あらすじ 森坂家の長女・理恵は、疎遠になっていた幼馴染の“ミハナちゃん”が病により急逝したことを知り、塞ぎ込んでいる。理恵の妹・奈緒の姉に対する視線は冷ややかだ。姉妹の母・美幸は理恵の精神的ケアや夫・大介の海外赴…

「図書館敵人生Vol.4 襲ってくるもの」感想:イキウメ

人は“自由”たりうるのか ★★★★★★★☆☆☆ 7点 概要 一つのテーマで短編を上演する「図書館的人生」の第四弾。今回は、「意識の中の魔物」。 人の無意識に潜む「思い出・衝動・感情」が、時に人に牙を剥く瞬間を捉えています。 上演されるのは3演目。イキウメらし…

「今、僕たちに出来る事。あと、出来ない事。from 2001 to 2018。」感想:シベリア少女鉄道

“できない事”を魅せる ★★★★★★☆☆☆☆ 6点 あらすじ 高校教師の鳥居一人は、突如 演劇部の顧問に任命されてしまいます。その演劇部は、異常なまでに演劇に“こだわり”を持つ廣瀬希美が演出を務めています。廣瀬の熱量に押されて、他の部員たちは白け気味。しかし…

「ラスト・ナイト・エンド・ファースト・モーニング」感想:悪い芝居

忘れたものでデキている。 ★★★★★★★☆☆☆ 7点 あらすじ 日野朝子には思い出がない。いつも家にいる歳のいった母との記憶がすべて。あの夜、幼い自分をインターネットの墓場で見つける。 温森春男はすべての記憶を失った。スマホをわずかな所持金だけを持って。…

「働けど働けど」感想。:カジャラ

働く姿の滑稽さ ★★★★★★★★★☆ 9点 概要 ラーメンズ小林賢太郎が作・演出を手がけるコント公演「カジャラ」。その第三弾にあたる「働けど働けど」。 俳優・お笑い芸人・劇団人、いろんな血筋を入れながら独特の世界を作り出す唯一無二の舞台です。 <ネタバレ>感…

「隣の芝生も。」感想:MONO

隣の芝生が青いのは、フィクションである ★★★★★☆☆☆☆☆ 5点 あらすじ 古い雑居ビルは配管が古くて水回りの調子が悪い。 隣合わせに入居している2つの会社。互いのことは詳しく知らない。 印象だけで羨ましく思い合っている。 無関係に思われたそれぞれの物語は…

「昔話デスマッチ」感想:柿喰う客

演劇空間の作り方 ★★★★★★★☆☆☆ 7点 あらすじとネタバレ 観劇三昧下北沢店の開店1周年を記念して行われた「路上演劇祭」。演劇ファンにはおなじみの、本多劇場横のヴィレッジヴァンガード前の路上で行われたお祭りです。 柿喰う客は寒さがこたえる夕方の出番。…

「目頭を押さえた」感想:iaku + 小松台東

田舎者に爽やかな風が吹く ★★★★★★★★★☆ 9点 あらすじ 山間にある人見村。衰退の一途を辿るこの村の林業と、この地で古くから行われてきた喪屋における葬儀。この2つの伝統を担ってきた中谷家と、8年前に都市から越してきた杉山家は親戚関係にあったが、杉山…

「俺を縛れ!」感想:柿喰う客

キャラクターを剥ぐ行為の先に… ★★★★★★★☆☆☆ 7点 あらすじ 2008年に“黒歴史的娯楽大作”として上演された作品の10年ぶりの再演。 幕府の大御所・徳川吉宗が大往生を遂げたことをきっかけに悪名高き将軍・徳川家重は奇妙な難題を諸大名に突きつける! 横…

「残雪の轍/キャンディポップベリージャム!」感想:シベリア少女鉄道

ダイレクト因果応報 ★★★★★★★★☆☆ 8点 あらすじ いつも通りのシベリア少女鉄道なので、あらすじと呼べるようなモノは存在しないのですが…。 戦国時代風の時代設定のなか、伊賀と甲賀に分かれて闘うことになってしまった忍の話。エビ中の安本彩花さん、元℃-ute…

「ちょっと、まってください」感想:ナイロン100℃

ペテン師は死なねばならないのか? ★★★★★★★★☆☆ 8点 あらすじ ケラリーノ・サンドロヴィッチが自称するように「不条理喜劇」なので、あらすじに大きな意味はないのですが、話の“スジ”としては以下のような感じ。 「金持ち一家」に「乞食の家族」が侵入してく…

「青いポスト」感想:アマヤドリ

私達の町にもある「青いポスト」 ★★★★★★★★★☆ 9点 あらすじ どこにでもある小さな町。とあるルールに支配されています。それは「年に一度、町で一番悪い奴を投票で決定し、選ばれた人間は消される」というもの。“セレクション”と呼ばれるこの制度により、町は…

「崩れる」感想:アマヤドリ

人間関係という共犯関係 ★★★★★★★☆☆☆ 7点 あらすじ 閉鎖が決まっている山奥の宿「クモの巣」。そこに大学からの仲良し男子4人組が泊まりに来る。宿の従業員含めて全員が男性というなか、外は台風で大荒れに。とある告白をキッカケに、仲良し4人組の関係も荒れ…

「散歩する侵略者」感想:イキウメ

イキウメ的「愛は地球を救う」 ★★★★★★★★★★ 10点 あらすじ 海に近い町に住む、真治と鳴海の夫婦。真治は数日間の行方不明の後、まるで別の人格になって帰ってきた。素直で穏やか、でもどこかちぐはぐで話が通じない。不仲だった夫の変化に戸惑う鳴海を置いて…

「極楽地獄」感想:柿喰う客@柿フェス

またひとつ、タブーが生まれる ★★★★★★★☆☆☆ 7点 あらすじ 赤坂にあるホテルの新人研修最終日。研修の最後にワークショップが始まる。講師ナガシマを中心に行われるそのワークショップとは、あるリゾートホテルで起こった「芋煮事件」というおぞましい惨劇を再…

「無差別」感想:柿喰う客@柿フェス

差別なき“無差別”の世界で待っていたものは? ★★★★★★★★★☆ 9点 あらすじ 「神も、仏も、獣も、人も…」戦後日本の思想転換を題材に描き出す、おぞましい因果の物語。第57回岸田國士戯曲賞最終候補作品、7名の女優による魂のリバイバル。 2012年に男女混合の劇…

「流血サーカス」感想:柿喰う客@柿フェス

舞台と客席の欺瞞 ★★★★★☆☆☆☆☆ 5点 あらすじ サーカス団に売り飛ばされた少年の波瀾万丈な冒険譚。エンターテイメントを愛する全ての人に送る怪奇娯楽作品。東日本大震災から一週間で創作&上演された問題作を新旧メンバーで再演。 餓死寸前の兄妹が人さらい…

「関数ドミノ」感想:イキウメ プロデュース

かすかな希望の描き方 ★★★★★★☆☆☆☆ 6点 あらすじ とある都市で、奇妙な交通事故が起きる。信号のない横断歩道を渡る歩行者・田宮尚偉(池岡亮介)のもとに、速度も落とさず車がカーブしてきた。しかし車は田宮の数センチ手前で、あたかも透明な壁に衝突したか…

「八百長デスマッチ」感想:柿喰う客@柿フェス

これぞ柿喰う客の圧倒的フィクション! ★★★★★★★★☆☆ 8点 あらすじ 「この戦いの結末は…入念に打ち合わせ済みだ!」あらゆる反則技が許された男たちの、壮絶かつ予定調和な死闘。俳優2人による意地とプライドを賭けた演劇勝負、ついに開幕。 永島敬三、大村わ…

「プレイヤー」感想:前川知大&長塚圭史

“劇中劇”と“現実”と“リアル”の入れ子構造 ★★★★★★★★★☆ 9点 あらすじ 舞台はある地方都市の公共劇場、そのリハーサル室。国民的なスターから地元の大学生まで、様々なキャリアを持つ俳優・スタッフたちが集まり、演劇のリハーサルが行われている。演目は新作『…

演劇初心者におすすめ!間違いなく楽しめる劇団5選

ランキング形式で、初めてでも楽しめる劇団をご紹介。 <1位>圧倒的フィクション:「柿喰う客」 柿喰う客 まずオススメしたいのが、「柿喰う客」。”圧倒的なフィクション”を標榜する劇団です。 代表であり、脚本・演出も務める中屋敷法仁が作る虚構を、異常…