郵便配達は二度チケットをもぎる

演劇未経験者が、駄文をこねます。

「アジアン・エイリアン」:劇団ワンツーワークス

不可視の水に身動きを封じられる体験

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★★★★★☆☆☆☆☆ 5点

あらすじ

病院の霊安室前。室内には交通事故で死んだ、ある男女の遺体が安置されている。
知らせを聞いて駆けつけた境田健吾は霊安室の前で茫然自失……。
死んだ女は境田の姪で、死んだ男は境田と仕事上の関わりがあったカメラマン。
二人は結婚を目前に控えていた。
ところがその場に、天涯孤独であったはずの死んだ男の姉だと名乗る女が現れ、霊安室での「あること」をきっかけに、死んだカメラマンの「素性」は大きく揺らぎ始める……。
そして、その不可解さを助長するかのように、霊安室のドアの下から「水」が染み出してくる。
しかしその水は、境田にも男の姉だと名乗る女にも、誰にも認知されない……。

ざっくり感想

肝は、実際の舞台に流れ出る「水」の演出。
舞台では、演者が淡々と演技を進めているのに、どんどん水が溢れ出してくる。
しかし、舞台上の演者には水が全く見えてない模様。

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※写真は前回公演時のもの

演者が舞台を移動する度、バシャバシャと水しぶきが上がる。
この水がなにを意味するのかを、2時間かけて紐解いていくわけですが、
理解できたときには、観客も含めて、身動きが取れない現状を突きつけられます。

<ネタバレ>水が示すモノ

この舞台は「無意識の差別(区別)」の恐ろしさを物語ります。
水は「差別""意識」とでも呼べば良いのか。 
気づかないうちは何も感じないけれど、一度意識してしまうと足元を覆い尽くす差別意識

この舞台では、”日本人”と”在日”が異物として語られます。
冒頭で死亡したカメラマンは、日本人の戸籍を買った”在日”でした。
娘同様の姪の結婚相手が”在日”であった時。
見た目も、中身も、何も変わらないのに「ラベル」が違うだけで感じる違和感。

「たとえ在日でも、そんなの気にしない!」というセリフは、無自覚に鋭利なナイフとなります。

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”水”が相手との「境界」になっていることは、日本ならではの意識かも。
島国において”水”は「自分たち」と「他人」を隔てる大きな壁です。

最後に自分も他人にとっての「エイリアン」であることに気づいた主人公を見ながら、自分の足元に並々と溜まった水に目をやることになるのでした。