郵便配達は二度チケットをもぎる

演劇未経験者が、駄文をこねます。

「首のないカマキリ」感想:劇団俳優座

生命の繋ぎかた

f:id:mAnaka:20180523180642p:plain★★★★☆☆☆☆☆☆ 4点

あらすじ

森坂家の長女・理恵は、疎遠になっていた幼馴染の“ミハナちゃん”が病により急逝したことを知り、塞ぎ込んでいる。理恵の妹・奈緒の姉に対する視線は冷ややかだ。姉妹の母・美幸は理恵の精神的ケアや夫・大介の海外赴任、同居する義母との関係、バンドマンの義弟が実家に戻ってくることなど、森坂家が抱える数々の問題に心労が絶えなかった。そこへ、20年以上会っていなかった美幸の叔父が現れ、“献体”について頼みたいことがあると言い……。

iakuの横山拓也氏の描き下ろし。
骨髄バンク」や「献体」といった、“生命”を次に繋いでいくことを考える物語です。

<ネタバレ>「生命を繋いでいく」方法

森坂家は、“ミハナちゃん”の病気が発覚したタイミングから、義弟の晴輝も含めて家族で骨髄バンクに登録しています。しかし、理恵は登録が可能な20歳を超えても登録する気配がない。そのことに妹の奈緒はいつも苛立っていました。

そんななかでの“ミハナちゃん”急逝に対し、姉が悲しんでいる姿に苛立ちはピークに。高校生である奈緒は、学校内で「ドナー登録」の登録用紙を配布するという実力行使に出ます。当然ながら、その未熟な行為は学校から咎められるのですが、理解ある両親や担任の力添えもあり、地に足をつけて「ドナー登録」の啓蒙活動を行うことを志します。

一方、結婚を間近に控えた理恵に、妊娠が発覚。出産時の臍帯血を提供する「臍帯血バンク」に登録し、ようやく“ミハナちゃん”の件と向き合う覚悟ができます。“ミハナちゃん”の母・智江に、自分が過去にHIV感染の疑いがあり、その経緯から「骨髄バンク」に登録できなかったことを告白します。智江は、理恵の妊娠を素直に喜びながら、“ミハナちゃん”が実は、卵子の冷凍保存を行い、自分の遺伝子を残す意思を示していたことを伝えます。

骨髄バンク」「臍帯血バンク」「卵子の保存」「妊娠」…様々な方法で、「生命を繋いでいく」ことができることが示され、それぞれの方法で「生命を繋いでいく」ことを考えながら、温かい空気が流れます。

そこに、もう一つの「生命を繋いでいく」方法である「献体」を選んだ叔父の死を仄めかす電話がかかってきて、舞台の幕が下ります。

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「生命を繋いでいく」という重たいテーマですが、会話を中心に軽やかに描いています。物語に差し込まれる叔父の存在感も、舞台にメリハリをもたらしていましたし、テーマも素晴らしかった。

ただ、iakuの舞台と比較すると、ちょっとウェットな感じに仕上がりすぎているかなと…。iakuでは、登場人物がストレート感情を表現することが少なく、それが舞台に多角的な視点をもたらしていると思います。そのため、iakuの舞台では、“主人公”が場面によって、揺らぐように変化します。

今回は全体を通して、すべてがストレート過ぎたかなと感じました。これは演出の狙いかもしれませんし、いつもの「関西弁」でのリズムが出なかったからかもしれません。

 

こちらの舞台は6/3まで、俳優座で上演されています。