演劇初心者におすすめ!間違いなく楽しめる劇団5選
ランキング形式で、初めてでも楽しめる劇団をご紹介。
<1位>圧倒的フィクション:「柿喰う客」
まずオススメしたいのが、「柿喰う客」。
”圧倒的なフィクション”を標榜する劇団です。
代表であり、脚本・演出も務める中屋敷法仁が作る虚構を、異常な身体能力を持つメンバーが、これでもかと早口長回しのセリフを発しながら暴れる舞台は、真の”非日常”を楽しむことができます。
※「天邪鬼」より
こう書くと、「難しい舞台」を想像して遠慮されそうですが、そこは人気劇団。
エンタメ性も非常に高く、客席から爆笑が起こることもしばしば。
ストーリーも分かりやすいものが多く、演劇慣れしていなくても問題なしですが、
分かりやすさの裏に「猛毒」が仕込まれているのでご注意を・・・。
また「乱痴気公演」という全配役をシャッフルする日を設定したり、シェイクスピアを女性だけで演じる「女体シェイクスピア」など、実験的な取り組みで演劇をアップデートしているのも大きな特徴。
「初めてだけど、ちょっとアングラな雰囲気も楽しみたい!」という方には本当にオススメ。
Youtubeでも無料公開されているタイトルがあるので、ぜひ。
<2位>生々しいSF:「イキウメ」
SF好きにおすすめなのが「イキウメ」。
小説や映画さながらの、練り込まれたストーリーが特徴。
実際に、主宰である前川知大は小説を書いたり、映画の原作も手がけています。
SFと言っても、設定にオカルトやホラーなどを取り入れているだけで、話はとても「人間臭い」ものが多いです。
”果てしない未来”ではなく、ちょっと先の”日常に潜む闇”にフォーカスします。
※「天の敵」より
ストーリーばかりに目が行きがちですが、役者のレベルもピカイチ。
荒唐無稽な設定も、安定感ある演技で、すんなりと飲み込むことができます。
特にSF的な設定を背負った「異質な人間」を演じる際は、なんの装飾や仕掛けもなく、本当に宇宙人か何かに見えてくるから不思議。
「カタルシツ」という別名義でも活動しており、例えば落語✕SF劇など、こちらも刺激的な舞台を展開しています。
2017年には「散歩する侵略者」などの映画公開も控えており、注目度の高い劇団です。
<3位>サブイボ群舞:「アマヤドリ」
東大中退という異色の経歴をもつ、広田淳一が主宰。
デザイナーが所属していたり、合同会社を立ち上げるなど、劇団という枠を超えて活動しています。
演劇のテーマに、現代的な重めの問題を取り上げることを特徴としています。
「自爆テロ」「死刑廃止」「集団詐欺」・・・。
それらの問題を、皮肉を交えた設定で戯曲化し、問題の本質を丸裸にしてしまいます。
※「すばらしい日だが金がいる」より
そんな重めのストーリーを包み込むように劇の前後で行われる「群舞」。
これがまた素晴らしい。
一糸乱れぬ動きで、独特の世界観を作り出しています。
この群舞を見終わったあと、なかなか現実に戻ってこれない自分がいます。
ご紹介している劇団のなかでは、最も人を選ぶ舞台かもしれませんが、中毒性がヤバいです。
<4位>アングラ劇団四季:「劇団鹿殺し」
劇団鹿殺しSHIKA564■Official Web Site
名前や見た目に騙されがちですが、王道ストーリーを展開する劇団。
様々な舞台要素を取り入れる、そのエンタメ性はピカイチです。
難しいことを考えずに、演劇を楽しみたい人におすすめ。
特に音楽には強いこだわりを持っており、オリジナル劇中歌を演者自ら演奏しながら、歌い・踊ります。
バカバカしく華やかで、他を圧倒するパワーをぶつけてきます。
※「名なしの侍」より
著名人にもファンが多く、松岡充、奥菜恵など有名な方をゲストに迎えることも。
今や逆に珍しくなってしまった、ド真ん中を直球で進む劇団なので、幅広い方に楽しんでもらえると思います。
<5位>メタ的演劇集団:「シベリア少女鉄道」
「ウレロ☆」や「LIFE!」など、人気番組の作家でもある土屋亮一が率いる劇団。
土屋亮一がやりたいことを詰め込んでいるのが、「シベリア少女鉄道」です。
最初は「普通の舞台?」と思わせておきながら、トリッキーな仕掛けが隠れており、後半は爆笑の渦に巻き込まれること請負。
精密に設計された舞台なのに、それをすべて笑いに昇華させようとする狂気を感じます。
※「ニホンゴチョットワカリマス」より
「演劇とは?」という問いにも直結する仕掛けが多く、考察したくなるのですが、それを上回る怒涛の"オモシロ"が襲い掛かってきます。
最後まで笑いっぱなしで、なのに最後はちゃんとカタルシスを得られる。
演劇でしかできないこと、という意味ではNo.1かもしれません。
見終わった後、ネタバレせずに面白さを伝えるのがとても難しい…。
いかがだったでしょうか?
もし、気になる劇団があれば、ぜひ劇場まで足を運んでもらえると嬉しいです。
やはり、演劇は生で見てなんぼです。
素敵な観劇ライフになりますように!
「アジアン・エイリアン」感想:劇団ワンツーワークス
不可視の水に身動きを封じられる体験
★★★★★☆☆☆☆☆ 5点
あらすじ
病院の霊安室前。室内には交通事故で死んだ、ある男女の遺体が安置されている。
知らせを聞いて駆けつけた境田健吾は霊安室の前で茫然自失……。
死んだ女は境田の姪で、死んだ男は境田と仕事上の関わりがあったカメラマン。
二人は結婚を目前に控えていた。
ところがその場に、天涯孤独であったはずの死んだ男の姉だと名乗る女が現れ、霊安室での「あること」をきっかけに、死んだカメラマンの「素性」は大きく揺らぎ始める……。
そして、その不可解さを助長するかのように、霊安室のドアの下から「水」が染み出してくる。
しかしその水は、境田にも男の姉だと名乗る女にも、誰にも認知されない……。
ざっくり感想
肝は、実際の舞台に流れ出る「水」の演出。
舞台では、演者が淡々と演技を進めているのに、どんどん水が溢れ出してくる。
しかし、舞台上の演者には水が全く見えてない模様。
※写真は前回公演時のもの
演者が舞台を移動する度、バシャバシャと水しぶきが上がる。
この水がなにを意味するのかを、2時間かけて紐解いていくわけですが、
理解できたときには、観客も含めて、身動きが取れない現状を突きつけられます。
<ネタバレ>水が示すモノ
この舞台は「無意識の差別(区別)」の恐ろしさを物語ります。
水は「差別"無"意識」とでも呼べば良いのか。
気づかないうちは何も感じないけれど、一度意識してしまうと足元を覆い尽くす差別意識。
この舞台では、”日本人”と”在日”が異物として語られます。
冒頭で死亡したカメラマンは、日本人の戸籍を買った”在日”でした。
娘同様の姪の結婚相手が”在日”であった時。
見た目も、中身も、何も変わらないのに「ラベル」が違うだけで感じる違和感。
「たとえ在日でも、そんなの気にしない!」というセリフは、無自覚に鋭利なナイフとなります。
”水”が相手との「境界」になっていることは、日本ならではの意識かも。
島国において”水”は「自分たち」と「他人」を隔てる大きな壁です。
最後に自分も他人にとっての「エイリアン」であることに気づいた主人公を見ながら、自分の足元に並々と溜まった水に目をやることになるのでした。