郵便配達は二度チケットをもぎる

演劇未経験者が、駄文をこねます。

「昔話デスマッチ」感想:柿喰う客

演劇空間の作り方

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あらすじとネタバレ

観劇三昧下北沢店の開店1周年を記念して行われた「路上演劇祭」。演劇ファンにはおなじみの、本多劇場横のヴィレッジヴァンガード前の路上で行われたお祭りです。

柿喰う客は寒さがこたえる夕方の出番。

風も強く、人通りも多く、周りもうるさいという、演劇としては劣悪な環境でどのような演劇を見せてくれるのか?という不安と期待を抱いた観劇でした。

内容としては「七味まゆみ」と「大村わたる」のデスマッチ。プロレスのような雰囲気でお互いに昔話を繰り出し、先に「めでたしめでたし」させた方が勝ちという奇想天外な闘い。
このムチャクチャな展開を、審判「加藤ひろた」と実況「田中穂先」がいい味出しながら支えます。

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桃太郎で攻める七味に対し、浦島太郎で守る大村。観客を巻き込みながら、ライブ感ある展開で路上は笑いっぱなし。

上手だな、と思ったのは「投げ銭」の受け取り方。
桃太郎の話を完結させるために、金銀財宝が必要になるのですが、それを観客からの「投げ銭」で賄おうとする荒業。演劇の流れに「投げ銭」を取り込むのは天才的な発想ですね。
昨今のSHOWROOMを始めとする「投げ銭ビジネス」の真逆を行くアイデアには感服しました。

 また、路上という環境を逆手に取り、観客に交ざった柿喰うのメンバーが“ガヤ”を飛ばすことで、プロレス会場のような雰囲気を作り出し、ちゃんと演劇空間を演出していました。

特に中屋敷法仁さんは、スーツに数珠を持ち、ストロングゼロを飲みながら煽ってくるという、フィクショナルなのに本当にいそうな、なんとも言えないキャラクターを演じていました。久しぶりに、舞台に立つ中屋敷さんもまた見てみたいな…。

ガードレールを、リングロープに見立てるなど、路上という環境をこれでもかとハックして、虚構を作り出す手腕はさすがの一言。
これが投げ銭だけで見られるのだから、大満足の30分でした。

今後も、ゲリラ的に市街劇とかやって欲しいなと。