郵便配達は二度チケットをもぎる

演劇未経験者が、駄文をこねます。

「八百長デスマッチ」感想:柿喰う客@柿フェス

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これぞ柿喰う客の圧倒的フィクション!

★★★★★★★★☆☆ 8点

あらすじ

「この戦いの結末は…入念に打ち合わせ済みだ!」
あらゆる反則技が許された男たちの、壮絶かつ予定調和な死闘。
俳優2人による意地とプライドを賭けた演劇勝負、ついに開幕。

永島敬三、大村わたるという柿喰う客に長く籍をおく俳優によるシンクロ舞台です。
何をするにも、相手と同じことをしてしまう小学1年生同士による「引き分け」という結果の見えた「八百長デスマッチ」の開幕です。

<ネタバレ>演劇というフィクションを丸裸に

30分のショート舞台ですが、柿喰う客が掲げる「圧倒的フィクション」をこれでもか!と詰め込んだ舞台になっています。

永島敬三が発したセリフを、大村わたるが一字一句違わず同じリズムで発する。「なるほど、そういう舞台か」と思った瞬間に、二人が同じセリフを同時に発し始まる。「うわー、よく練習しているな」と感心していると、まさかシンクロしたまま舞台が進行していく。
最初「すごいな」と思ったシンクロも、長く続けば続くほど「これどこまで続ける気だよ、最後までいくつもりじゃないよな?」という不安に変わっていく。
演じる俳優以上に、観客に良い意味で“ストレス"を与えてくる。

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これぞ脚本・演出を手がける中屋敷法仁の狙いだと思います。
2人がシンクロする物語なんて、小説はもちろん、ドラマやアニメでやっても何も面白くないはず。“ナマモノ”である演劇だからこそ、観客を共犯関係にすることで成立する物語です。
まさしく、観劇でしかできない体験を提供してくれます。

柿喰う客の少人数舞台には、玉置玲央が行う一人舞台「いまさらキスシーン」がありますが、本当に信頼している俳優たちだからこそ、このような舞台を演じさせることができるのでしょう。
※ちなみに過去、玉置玲央も「八百長デスマッチ」に出演しています。

柿喰う客には、続々と新しい俳優たちが入ってきてますが、古くからいるメンバーが軸となって活躍を続けてほしいと思います。

 

この作品は、「柿喰う客フェスティバル」という1ヵ月で4作品を上映するイベントの1作品です。30分と短く、「圧倒的フィクション」を体験できる「八百長デスマッチ」は柿フェスのスタートにもってこいの作品ではないでしょうか。

11/5まで開催されてますので、興味のある方はぜひ劇場に行って頂ければと思います。