郵便配達は二度チケットをもぎる

演劇未経験者が、駄文をこねます。

「サマータイムマシン・ワンスモア」感想:ヨーロッパ企画

史上最高の「2」かもしれない

f:id:mAnaka:20180910132135j:plain★★★★★★★★★★ 10点

あらすじ

タイムマシンが現れた「あの夏の日」から、15年後。
SF研究会の元メンバーたちと、隣のカメラクラブの部員たちは、再びこの部室にやってきた……。

三十路を過ぎたSF研のメンバーが2018年にカムバック。同窓会のついでに寄った部室には現役の聡太(SF研)と箕輪(カメラクラブ)の現役生の姿が。そんななか、タイムマシンと共に田村くんが登場します。2028年に戻る予定が10年ズレて2018年に戻ってきてしまいます。10年ぶりのタイムマシンに興奮するメンバー。タイムパラドックスを恐れる小暮をよそに、過去を変えない程度にタイムマシンを楽しむことが決まります。当然、そんなうまくいくワケもなく…。

<ネタバレ>より複雑に、より深く

今回はタイムマシンが3つ登場することでより複雑なタイムトラベルになっています。「2週間前にレポートを提出しにいく現役組」
「2004年に感光したフィルムを取り返しに行くカメラクラブ組」
「2004年の学祭にレディー・ガガを見に行くSF研のズッコケ3人組」
の3組が同時にタイムトラベルし、その行方が複雑に絡み合ってきます。

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さらに、今回は現代(2018年)でもストーリーが展開。同級生の蛭谷が、大学を潰してショッピングモールを建設する計画を進めていることが分かります。2018年に残った甲本小暮は、過去で暴走するメンバーを止めつつ、蛭谷の計画の阻止を同時並行で行うという無理難題に立ち向かいます。

物語の流れが4つも同時並行しているため、混乱しそうなものですが、そこはヨーロッパ企画。さすがの構成で、なんのストレスもなく観劇することができます。会場でも常に笑い声が絶えませんでした。

さらに、ここに「サマータイムマシン・ブルース」をオマージュしたネタがこれでもか、と展開されていきます。
※「ヴィダルサスーン窃盗事件」「カッパ伝説」などなど

最終的に、小暮蛭谷は大学を救うために2015年に戻り、そのまま3年間過ごした後、2018年に合流する計画を立て、どうにかショッピングモールの建設を阻止します。しかも、田村くんのお父さん(つまり柴田の旦那)が過去に戻った現役生・聡太だったことが判明し、すべてが丸く収まります。

完璧に伏線を回収し、幕が下りるかと思いきや、現役生・箕輪がコーラをリモコンにこぼしてしまいます。案の定、リモコンはこわれて動かなくなる。このままでは2028年の田村くんたちにリモコンが繋がらない…。

そこで甲本が一言。「小暮、お前タイムマシン作れる…?」

さらなる続編だってアリ得るかも、という匂いをさせながら舞台は終わります。

サマータイムマシンの凄さ

タイムトラベル×コメディとして完璧な構成を持つ「サマータイムマシンシリーズ」ですが、なにがそんなに凄いのか?その一因として、「自力で帰ってくる」という発明があると思います。つまり、過去から帰ってこれなくても、現代までの時間を過ごして、合流するという最終奥義。これが成立してしまうと、タイムトラベルが持つハラハラ感がなくなってしまうという反則技です。

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しかし、これをうまく物語に取り入れ、サイコーのスパイスに仕上げています。「サマータイムマシン・ブルース」では甲本が“1日”自力で帰ってきましたが、これが「ワンスモア」では、“半年”にも“3年”にもなり、よりダイナミックなシカケになっています。
この大技も、登場人物たちがオトナになっているから可能に。大学生にとって“3年”を追加で過ごすのは非現実的ですが、オトナの彼らにとっては耐えられるものになっています。この辺りのさじ加減も絶妙です。

 

舞台自体が「タイムマシン」として機能してしまっている側面もあるかと思います。再演を見ていると、否が応でも初演を見た頃の自分を想像してしまいます。舞台が「ブルース」から「ワンスモア」に進化したように、自分も成長できているでしょうか?

いつかまた、再演&続編をやってくれることを期待せずにはいられません。またタイムトラベルして、いまのことを思い出したいものです。その感覚を味わうためにも、絶対にお見逃しなく!

 

サマータイムマシン・ブルース」の感想はこちら

theaterist.hatenablog.com

 

サマータイムマシン・ブルース」の脚本はこちら
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瑛太主演の映画はプライムビデオで見られます。
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